こんせぷと
YASURAHI.やすらひーいつものポケットに、そっとひと匙のくつろぎをー
子どもの頃、ポケットの中はいつでも宝物でいっぱいでした。
道端で拾った綺麗な石に、友達がくれた大切なシールやカード。
それに海岸で見つけたナゾの物体(あれは一体、なんだったのでしょうか……)。
そんなささやかなもので、ポケットをパンパンに膨らませているのがとても幸せでした。
やがて少しずつ大きくなり、ポケットの中には学生手帳やお気に入りのキャラクターのシャープペン。
もっと大きくなると、今度は名刺入れや、ちょっとだけ頑張って買ったボールペン。
それに、子どもと一緒に食べた飴玉の包み紙や、あとで飲まないといけない薬とか、ほかにもまだまだ、たくさん。
いつの間にか、ポケットの中はいっぱいです。
大きくなればなるほど、ポケットがだんだん少しずつ、きゅうくつになっていたようです。
両手いっぱいに掴んだ砂場の砂も、友達と競って遊んだヨーヨーも、山で見つけた得体の知れない木の実やセミの抜け殻も(うっかり洗濯機から出て来た時にはとっても怒られました)。
どうして、あんなにたくさん入っていても。
いつだってポケットは軽かったのでしょう。
やすらひ、やすらふ。
木漏れ日のような、月明かりのような。
いつもそこにある何気のない日常の中の柔らかな景色。
そんなこぼれてしまいそうな、安らかで小さな一粒を拾い集めて。
時々気の向いた時にほんのひと匙だけ、そっとポケットに入れられたら。
もしかすると、少しだけ。
またあの時のように。
いつものやすらひに。
なるのかも。